販路を変えて競争力の高いポジショニングを作るには?自社の強みと存在理由

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この記事では販路を変えることで競合他社とは差別化を図り、独自のポジショニングを見つけた事例をご説明します。単に販路を変えただけでは差別化に繋がりませんが、明確な目的を持って行うことで圧倒的な強みを発揮できる場合があります。

同じ業界に長くいると、知らないうちに業界の慣習ややり方が身についてしまいます。

もちろん多くの会社が培ってきたやり方ですので、大筋では間違いは無いとは思います。

しかしセミナーや勉強会などで異業種の事例を見聞きした時、

  • そんなの上手く行くはずがない
  • まあ参考にだけしておきます
  • 自分の業界では無理だよ

などと、ふと思ってしまう事はありませんか?

実はその思い込みこそ、自社の強みを見つけるポジショニング戦略の大敵なんです。思い込みが強すぎると、自社の本当の強みに気が付かない恐れがあります。

この記事でご説明する事例は、会社の危機に際して自社の強みや存在理由を見つめ直した結果、業界内ではかなり異端の営業手法や販路に切り替えて成功した企業のご説明をします。

是非とも最後までお読み下さい。

販路を変えた結果、競争力の高いポジションへ

システム業界は大きく分けるとパッケージシステムの開発販売をメインにしている会社と、受託案件をメインにする会社に分けられます。

このシステム会社は自社開発した設備業界向けのパッケージシステムをメインに事業展開しています。

代理店営業が一般的な業界

設備業界向けのパッケージシステム業界では、競合他社も規模が小さい会社が多いため、営業は代理店を使うことが一般的です。

自社の営業担当者はもちろんいますが、営業経費やマンパワーなどを考えた場合、自社だけではとてもカバーできません。

また営業担当者を新たに何十名も雇用できる売上げが見込める業界でもありません。

そのため営業効率を考えると代理店営業は確かにメリットがあります。

代理店営業のデメリット

しかし代理店を使うと、当然ですが得られる利益は減ります。

また代理店の営業担当者は技術的な知識が乏しい方も多く、確度の低い新規の見込み客であっても、同行営業を依頼されることが多々あります。

そして一番の問題点は、代理店の営業担当者に課せられた営業ノルマです。

代理店は所詮他社ですし営業担当者も他社の人間なので、営業ノルマを達成するためには売りやすいものを優先的に提案します。

そのため自社の思うような営業展開が図れないというジレンマが常に付きまといます。

更に代理店の方が企業規模が大きい場合が多く、提案や営業ペースを代理店の営業担当者に握られてしまうことも多々あります。

そのためこのシステム会社の社長は代理店の影響力を減らし、自社が前面に立てる営業展開を進めようと決断しました。

ネット集客とインサイドセールスに特化

このシステム会社が取った戦略は、営業活動の重要な部分である集客をネットに絞り込むことでした。

その結果、現在では全売上げの中で代理店が占める割合を10%以下まで下げることに成功したのです。

当初予想していた通り、代理店の割合が下がったことで新規の引き合い数は減りましたが、その中には確度の低い見込み客も相当数含まれていました。しかし集客を自社で行なったことで、逆に確度の高い見込み客に絞り込んだ営業提案を、自分たちのペースで行なえるようになりました。

また電話とWebを使ったデモを効率的に行なう仕組みを取り入れたことで成約率も上がり、売り上げや利益率は順調に伸びました。

いわゆるインサイドセールスの手法を取り入れたのです。

このように営業を効率化したことで、空いた時間を既存顧客へのサポートや対応に振り替えた結果、他社へのリプレイスや離脱率を大幅に減少させる事にも成功しました。

経営方針を変えた理由

このような仕組みに切り替えたのには、大きな理由はありました。

既存顧客を最優先に

実は過去に営業部長が営業チームを引き連れて、独立してしまった事件があったそうです。

それをきっかけに新規案件も大事ではあるが、それ以上に既存客へのサポートに力を入れ、顧客満足度を高めて離脱率を下げる経営方針に切り替える決断を社長はしました。

顧客の視点からすると、それほど違いの無い社内システムの導入や継続利用を決める理由は、結局は価格やサポートといった点になります。

社内システムを導入するには百万円単位の予算がかかります。また一度導入したら少なくとも数年は使うことになるため、顧客から見れば導入後のサポートはやはり重要です。

しかし多くのシステム会社は年間保守費用は請求するが、導入後のアフターケアにはそれほど力を入れません。その結果、何かのタイミングで他社にリプレイスをされてしまうケースが多いのです。

自社の競争力を高める戦略

つまり社長が下した決断の根底には、新規顧客獲得の手間を減らすことで社内リソースに余裕を持たせ、その分を自社の開発力や技術力などの強みを生かしたサポートに注力させることで、自社の競争力を高めるという戦略があったのです。

そして徐々に集客をネットに絞り、営業活動もインサイドセールスを取り入れ、代理店営業を減らしていく販路の選択と集中を進めていった結果、現在の営業体制ができあがりました。

つまりこの営業手法こそが競合他社とは異なる、この会社の強みが発揮できるポジショニングだったのです。

販路を変えることが目的では無い

ここで重要なことは、販路や営業手法を変えることが目的ではなく、自社の強みや顧客の求めているポイントを突き詰めた結果が、集客や販路を変えるという選択だったという点です。

まずは自社の強みや存在意義、そして何よりも経営者が顧客に対して提供できる価値をまずは探すことが大切です。

何をやるのかではなく、何を提供できるのかということが重要なのです。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

この記事では営業手法を変えるポジショニングをしたことで、自社の強みを強化した事例をご説明しました。

大事なことは、まずは自社の強みをしっかりと分析することです。

  • 既存の顧客はなぜ皆さんの会社と取引をしているのか?

こういった話は仲の良い取引先に直接聞くのがベストです。

是非とも皆さんも自社の強みや存在意義を改めて見直し、その上で、競合他社との差別化できるポジショニングを探してみて下さい。