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良い商品でも、人知れず消えていく商品は沢山あります。逆に大したことないのに、、、と思える商品が大ヒット商品になることもあります。この記事では売れる商品を作るために必要な考え方や視点を説明します。
繁華街にあるオフィス街ですと、ランチ時になると飲食店にはたくさんのお客さんが並びますよね。飲食店だけでなくコンビニのレジも長い行列ができます。
しかしよく見ると、人がたくさん入っているお店もありますが、あまり入っていないお店もあります。
その理由ってなんだと思いますか?
- 美味しくないから?
- 高いから?
- 店員の愛想が悪いから?
上げればキリがないと思いますが、お客さんが入らない本当の理由は、そういった細かいことではありません。本当の理由は値段や味、店員の愛想といった細々したことではなく、そもそもビジネスの方向性が間違っている可能性が高いということです。
と言っても戦略コンサルタントが仰々しくプレゼンするような大層なことではなく、言われてみればすぐに納得がいく程度のことなんです。
必要な考え方は次の三点です。
- 良い商品=売れる商品ではない
- 消費者に合わせて品質と価格を変える
- 売れる商品=良い商品である
この記事では自動車メーカーのスズキの事例を上げ、ヒット商品開発に役立つ考え方を説明します。売れる商品と良い商品の違いについて解説していますので、是非とも最後までお読み下さい。
この記事の目次
過去の商品戦略の考え方を捨てる
商品戦略を考える時、多くの担当者は良い商品を作ろうと考えます。なぜなら良い商品が売れると思うからです。
確かに日本を代表するトヨタや日産、ソニー、ヤマハ、京セラ、日本電産、キーエンスといったメーカーの商品は高い品質を誇ります。その品質を武器に世界でトップレベルの戦いをしています。
品質ではなく低価格が「良い」商品
しかし世界的に見ると、品質が低くても売れているメーカーは多数あります。
例えばスマホメーカーのシャオミ、最近話題のファーウェイやZTE、白物家電ではハイアール、LGやサムスンなど、品質や機能面では日系メーカーの方が良い商品がたくさんありますが、残念なことに世界では惨敗しています。
これらのメーカー商品を購入するユーザーが求めているのは、品質や機能ではなく低価格です。普通に使えて安い商品が欲しいのです。
日本と同程度の所得がある国は世界でもごく一部のみです。また、先進国であっても所得の格差は広がっています。つまり世界的に見ると大半の消費者は品質や機能よりも、日常使いができる低価格の商品を「良い」商品と考えています。
日本でも低価格化が広まっている
日本国内でもこの考え方が既に一般化しています。
吉野家や松屋などの牛丼チェーン、サイゼリア、ダイソー、ニトリ、ユニクロなどはその代表ですが、共通しているのは「日常使い」と「そこそこ安い」という点です。
もちろんその反対にある「非日常的」で「高い」商品も人気はあります。しかし「日常使い」と「そこそこ安い」商品を求める消費者の方が、日本でも圧倒的に多くなっています。
つまり売れる商品は、必ずしも「良い」商品である必要が無いと言うことです。また、価格の安い商品は確実に高い商品よりも売りやすいのです。
利益の出せる仕入先を探すことが重要
ここで大切なことは、安い価格でも利益の出せる仕入先を確保することです。売る努力の数倍の力を入れてでも、利益が確保できる仕入先を見つけることが最も重要になります。
品質を変えて大ヒットしたスズキ自動車
次に日本を代表するメーカーであるスズキ自動車の事例を上げて説明します。数年前、某大手企業さんの案件でインドに出張に行った時の話です。
テレビや雑誌などのメディアでは、インドは人口は増えているし教育水準も平均賃金も上がってるので、近い将来、巨大マーケットになると言われてます。日系企業もそのような大きな潜在市場を攻略しようと、続々と進出を始めています。
インドで走るスズキ車のクオリティ
その中でスズキ自動車は数十年前からインドに進出し、完全に現地生産化した結果、現在は大きなシェアを占めています。ここまでが日本でインターネットを見て知っていた情報です。
しかし実際にインドに行って驚いたのことは、スズキ車の品質が全く日本国内のスズキ車とは違うと言うこと。特に内装の質が驚くほど低いんです。どれを取ってみても、日本車とは思えない低クオリティの車が至る所で走っていました。
スズキの下した判断は?
しかし別案件とはいえインド市場を数日間リサーチした後、気が付いたのは、インド人の購買力は決して高くないということでした。
購買力の低いユーザーにとって、何より安くなければ購入できません。品質や機能は二の次であり、日常使いに耐えられる「丈夫さ」と収入の中で買える「安さ」こそが重要なのです。そのためスズキは安全性に影響しない程度に作りを簡素化し、製造コストやクオリティをインド市場に合わせて落としたと考えられます。
もしスズキが日本と同等の品質にこだわって製造販売をしていたならば、スズキの成功は絶対に無かったでしょう。
日本メーカーが失敗した理由
この点で失敗しているのが、日本の白物家電やスマホメーカーです。
悔しいですが品質や機能ばかりを追求した結果、前述のハイアールやLG、シャオミなどに世界市場で完全に負けてしまいました。
つまり市場に合わせて、消費者が必要とする品質と価格で販売する事が重要であり、消費者のことを考えていない「高品質」や「こだわり」はメーカーや商品開発担当者のエゴでしかないということです。
売れた商品が必ず正しい
ビジネスである以上、利益の出せる適正価格でたくさん売れれば儲かります。会社が儲かれば従業員も儲かりますし、その利益を使って次の売れる商品を開発することができます。
しかし商品開発担当者がどれだけこだわろうが、売れない商品は儲けを生み出しません。儲けがなければ従業員は生活できませんし、次の商品開発もできません。
売れた商品こそが常に正しいのです。消費者が選んでくれた商品にこそ正解があります。
消費者の声が常に正しい訳ではない
売れる商品を作るために消費者モニター調査を行なう企業も多いと思いますが、200社以上の企業を調査分析してきた経験から言えることは、消費者の声は必ずしも常に正しいとは限りません。
例えば大手食品メーカーは毎年何百以上もの新商品を発売します。事前に数百万~数千万という予算を使い、モニター調査や市場調査などの定量調査を行なった上で商品開発を行ないます。しかし実際にはほとんどの商品は一年以内に消えていきます。
大きな予算を使える大手企業はそれでも良いでしょうか、予算の限られるスモールビジネスの場合、大きな予算が必要な消費者モニター調査を頻繁に行なうことはできません。
自社で行なう市場調査についてはこちらの記事が参考になります。

そのため商品開発を行なう場合、まずは小さな規模でテスト販売を行い、実際に売れるかどうかを確認することが必須です。インドにおいてスズキ車が売れている理由は、インド市場で売れる自動車を販売しているからです。決して高品質だからではありません。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
この記事で説明した内容は商品開発をする時だけでなく、新しい商品を仕入れる時にも使えますので参考にして下さい。
ではここで最初に書いたお客さんの入らない飲食店が、繁盛店になるための秘訣を書いてみます。
- 周辺の競合店で何が売れているのか食べに行く
- そのメニューを安い価格で提供できる仕入先を開拓する
- 効率的に提供できるオペレーションを考える
- テスト販売を始める
- 客の反応を見ながら味や価格を調整する
まずは繁盛している競合をリサーチし、どのような商品やサービスが売れているのかを把握する。次にほぼ同じサービスや商品を自分たちが提供する方法を考え、利益を確保できる範囲で少し価格を安くしてテスト販売してみる。その上で客の反応を見ながら、味や価格を調整してゆく。
最初は自分たちのオリジナルではなく、売れている競合他社のマネをすること。その上で反応を見ながら調整をしてゆくことが、一番の成功法則だということです。