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この記事では自社が競争力の高いポジショニングを見つける方法を、切り口を変えてみるという視点からご説明します。中にいると見えにくいですが、自社のことを外部から客観的に見ると、ポジショニングに繋がる新しい切り口が見えてきます。
あなたは自分の会社のことを知っていますか?
吉田さん
多分こんな質問をされたことは無いかもしれませんね(笑)
しかし多くの方にインタビューを行なってきた経験からすると、知っていると思い込んでいる方が圧倒的に多いんです。組織の中にいると内部のことは当然のことになってしまい、客観的に見る機会はほとんどありません。
つまり何となく把握はしているけども、自社の強みや弱み、存在意義などについては深堀りしたことがない方が大半です。
この記事では外部から俯瞰的に自社の強みを探ることで、新しい切り口で競争力の高いポジショニングを見つけた事例をご説明します。是非とも最後までお読み下さい。
この記事の目次
切り口を変えて差別化を図るポジショニング
切り口を変えて競合他社には無い強みを打ち出すというやり方は、プロモーションの切り口を見つける時にも良く使われます。
プロモーション提案の事例
私が広告会社に勤務していた時、日本を代表する某大手文房具メーカーの海外販促ツール制作の競合コンペに参加しました。競合会社は大手広告代理店のD社など4社コンペでした。
その際、私が力を入れたことは商品の素晴らしさを伝えることではなく、この会社と新規で取引きを始めるべき理由を伝えることでした。
何度もヒアリングを重ねる中で、この会社の商品の魅力は多くの社員達が培ってきた想いや積み重ねてきた安心感があるからこそであり、商品の素晴らしさだけでは無いという事に気付いたからです。
結果的にクライアントから最も評価を受け、この案件を受注することが出来ました。
伝えるべきは「売れる商品を作れる会社」
その際クライアントの担当役員から言われたことは、他社は全て商品を見栄え良く見せる提案だったが、私だけが会社の魅力を伝えることを提案してくれたという事でした。
新規の取引先にとって新しい会社と取引きを決定するポイントは、利益が出るかどうかだけです。つまり商品自体の見栄えでは無く、その会社が魅力的な売れる商品を作れるかどうか、その点だけが重要だったのです。
実はクライアント自身、当初はこのことには気づいていませんでした。何度となく質問を重ねる中で、徐々に見えてきた結果がこのポイントでありポジショニングでした。
いかがでしょうか?
この例を見て分かるように、切り口を変えるだけで競合他社と大きな差別化を図り、競争力の高いポジションを見つけることはできます。
次はある健康食品メーカーの事例を上げてご説明します。
効能や見た目、食感で切り口を変える
ほぼ同じ商品であっても、ユーザーへ訴求する商品の効能やベネフィットが異なればユーザーは異なる商品と受け取ります。見た目や食感なども同様です。さらに購入者層も変わってきます。
つまり、切り口が変わるだけでポジショニングが変わるという事です。競合他社が少ないカテゴリにポジショニングをするだけで、差別化することができるのです。
No.1調査を行って判明した事実
この事例のクライアントは飲料関連の健康食品メーカーでした。このときの調査はNo.1調査だったのですが、当初クライアントはより大きな市場を求め、原材料を軸にした業界一位宣言を考えていました。
つまり健康食品という市場だけでなく、一般加工食品市場でも(可能ならば)一番になりたいという意図があったのです。
しかし他社商品を調査した結果、健康食品というカテゴリでは販売数、売上高ともクライアントの商品がNo.1なのですが、原材料的にはもっと売れていると思われるナショナルブランド商品がありました。
この商品は原材料の味わいを前面に出しており、地味ではありますが全国区で認知されています。つまり原材料を軸にした切り口では、クライアント商品はNo.1では無いという事実が判明しました。
ナショナルブランドの商品は食品卸会社経由で全国のスーパーで販売されており、飲食店などでも広く使われています。つまり一般加工食品やリアル販路などの要素を含めると、クライアントに勝ち目は無かったのです。
競合調査についてはこちらの記事が参考になります。

違う切り口で比較してみた結果
次に効能やベネフィットという切り口で調査してみました。健康食品は薬事法が絡みますので、明確な効能やベネフィットは表記しずらいジャンルです。
改めて健康食品ジャンルの競合を調査してみると、競合各社はターゲット設定すら曖昧でした。また、身体の不調や悩みに対して、どのような効能が期待できるのかという訴求についても非常に弱いことが分かりました。
そのような市場の中でクライアントの商品は働く女性をメインターゲットに、若々しさや活力、体力の維持促進、美容促進といったメッセージを明確に打ち出していました。
ちなみにクライアント商品よりも売れているナショナルブランド商品は一般加工食品ジャンルであり、効能を訴求する販売は一切していません。味の清涼感や美味しさを前面に出した訴求を行なっており、健康食品ジャンルにおいてクライアント商品に脅威を及ぼす心配は皆無です。
強みを生かせる差別化ポイント
このことからクライアント商品は「通販」、そして「健康食品」という特定カテゴリの中で強いこと。そして明確にターゲットと効能が打ち出されているということが分かりました。
つまり原材料の風味や味わいを前面に出したり、一般流通というカテゴリ商品の中では差別化できる強みは無い。今まで展開してきたエリアこそが自社の強みが発揮できる、差別化されたポジショニングであることが改めて明らかになったのです。
その結果クライアントのプロモーションテーマは今まで通り、「通販」「健康食品」というカテゴリの中でのNo.1と言うものになりました。
ただし本調査とは別途になりますが、このクライアント商品の場合、ターゲットの性別や年齢層を変えたり商品名を変えることで、新しいマーケットを開拓できる余地は大きいと個人的に思います。
競合との商品の差別化については、この記事も参考になります。

まとめ
いかがでしたでしょうか?
この通販会社の事例では、外部から客観的にリサーチすることで、自社の強みが発揮できる切り口やポジションを改めて再確認できたという結果に繋がりました。反対に「強みになるのでは!」と思っていたポイントが、実はもっと強い競合がいたという事実が判明しました。
会社の中にいると、当たり前すぎて見えなくなっている事がたくさんあります。このような時、外部の人間のサポートを受けると、難しく思えた競争力の高いポジショニング探しが案外簡単にできます。
社内で行う時は同じ部署のスタッフだけでなく、様々な部署や年齢のスタッフから、自由に意見を言ってもらうことをお勧めします。その際、答えを誘導するのではなく、まずは自由なイメージをたくさん出してもらうことが重要です。
是非とも皆さんの会社でもやってみて下さい。