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差別化をするために、新たにサービスを付け加える企業は多いと思います。しかしこの記事では今まで提供していたサービスをあえて止めたことで競合他社との差別化を図り、利益を伸ばしている企業の成功事例を説明します。
売上げを伸ばすためには競合他社との差別化を図り、今までとは違ったサービスや機能を考えないと!と多くの経営者や営業責任者は毎日頭を悩ませているのではないでしょうか。
この時代、自社だけの完全なオリジナル商品やサービスと言うのは中々ありません。売れるにつれて、マネをしてくる競合他社も数多くいます。
しかも差別化をするために、若干のプラスアルファの機能やサービスを加えてくることも多く、似ているのに微妙に違うという商品やサービスが数多くあります。
しかし差別化とは既存のものに、新たに「何かを」付け加えるだけがやり方ではありません。業界で当たり前のサービスをあえて止めることで、逆に顧客から支持された事例もあります。
この記事を最後まで読めば、止めることで成功する差別化の切り口を学ぶことができます。
この記事の目次
付加価値にもコストがかかる
本来、付加価値とは既存の商品やサービスにより高い価値を付加し、より高い価値や対価を生み出すものでした。
しかし競合企業が多い業界では新規客の獲得や既存顧客を囲い込むために、ありとあらゆる付加価値施策を各社が行なっています。
自社を選んでもらうため、他社以上のクオリティやサービスなどの付加価値を差別化と称して提供することが一般化しています。
そのため本来は付加価値を提供するためにかかるコストは請求すべきものなのですが、現実的には無償や割安で提供せざるを得ない場合が多いと思います。
付加価値というデメリットのスパイラル
しかもこの付加価値提供のスパイラルに競合各社がこぞって参加してくるため、顧客にとってはメリットがあっても、提供する側にとっては自分の首を絞めるような状況を自らが作り出しているとも言えます。
また付加価値が提供できない場合、顧客から値下げ要求や見積もりの見直し要求が来ることも多々あります。
「サービスを止める」サービスを提供
この事例は私が過去に調査分析した板金機械向けのパーツを製造している企業が、それまで業界では当たり前であったサービスの提供を中止したことで人件費のコストダウンに成功し、さらに競合他社との差別化に繋げた成功事例を説明します。
人員不足が大きな悩みの中小工場
この企業は年商10億円ほどの中小企業で、メインの顧客は中堅から大手の機械メーカーです。
この工場で長年課題になっていたのは、納品後に顧客から来る保守点検依頼でした。費用は請求できるものの、対応できる人員が不足していました。
顧客は機械の調子が悪いから見に来いと気軽に呼びつけますが、ただでさえマンパワーが不足している中小工場にとって、半ば強制ともいえる依頼に対応する負担は非常に大きかったのです。
点検保守に技術者が取り掛かっている間、通常製造は止めざるを得ません。その分は残業などで取り返すしかないため、結局は人件費が更にかかってしまう悪循環に陥っていました。
サービスを止める代わりに提供したもの
そこでこの会社は保守点検サービスを止める決断をしました。と言っても完全に止めるわけではなく、点検保守に行かないというサービスを始めたのです。
どういうことかと言うと、この会社は過去の不具合事例をまとめた解説書と、部品を納品先の技術者が自分たちで交換できるよう詳細な取扱説明書を作成し、パーツを販売する際に安価で提供したのです。
顧客からすると、今まで点検保守に十万円単位でかかっていた費用が交換パーツの実費だけになりますので、費用は半額程度になります。工場にとっても保守点検に割かざると得なかった人員を、通常の製造に使えるため、余計な残業代をカットすることができたのです。
このサービスを開始してからは、この会社の技術者が顧客の工場まで点検保守に行くことは以前の20%以下にまで減りました。顧客にとってもランニングコストを下げることができたので、両社ともWin-Winな結果になりました。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
付加価値は必ずしも付加するだけでは無いということがお分かりになりましたでしょうか。
この事例の場合は完全に止めるのではなく、代替サービスを提供したわけですが、それでも負担を劇的に減らすことに成功しました。
顧客もこの工場から部品を買えば、点検保守のランニングコストを減らせる付加価値を得ることが出来ました。
このように業界で当たり前のサービスや慣習も、視点をずらして考えると、実は必要なかったという場合もあります。是非ともこの考え方をあなたの会社の差別化戦略にも生かしてみて下さい。