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市場調査や競合調査を実際に外部に依頼する会社は多くはありません。そのため情報があまり流通しておらず、内容についてはもちろん、費用の面でも公正な比較ができないとお悩みの企業は多いと思います。ならばまずは自社でやってみるのも一つの手かもしれません。
市場調査やマーケティングリサーチという言葉は一般的に良く使われますが、実際にやられた事がある企業は恐らく少数派だと思います。
特に中小企業やベンチャー企業、さらには士業やコンサルタントといった個人事務所ですと、競合他社の情報や市場動向に興味はあるけど、実際に頼むとなると予算的にもハードルが高いというイメージがあるかもしれません。
川崎
ならばまずは一度、自社で出来る限りの所までやってみたらいかがでしょうか。実は内容によっては、自社でも十分できるやり方があるんです。
この記事では大きなコストを掛けず、できる限り自社で行なえる市場調査のやり方についてご説明します。基本的なやり方が分かれば、明日からでも皆さんの会社で実施できますので、是非とも最後までお読み下さい。
この記事の目次
自社で行ないやすい市場調査とは
市場調査は大きく二つに分かれます。
- 定量調査・・・・モニター調査、ネットリサーチ、アンケートなど
- 定性調査・・・・覆面調査、グループインタビュー、対面インタビューなど
どちらの調査が優れているというものではなく、案件に応じて使い分けることが基本です。
- 定量調査とは収集された人数や割合、傾向値といった明確なデータを数値化し、集計・分析する調査方法
- 定性調査とは対象者の意見や行動、状態や観察者の印象などを収集する調査手法。数値化できない本音を探ることができる。
BtoC向けの定量調査がおすすめ
自社で行なう市場調査の場合、やりやすいのはBtoC向けの定量調査です。BtoB向けの調査ですと対象が企業ですので、自社でやるには母数を集めるのが非常に難しくなります。
現在は自社でアンケート回答者を探せる大手サイトがあるので、数十名単位で一般消費者のアンケートモニターを探すことはそれ程難しくありません。
定性調査は対象相手から話を引き出す必要がありますので、専門の教育を受けていないと、BtoBでもBtoCであってもかなりハードルが高いです。
ですのでこの記事ではBtoC向けの商材を扱っている会社を対象に、インターネットを使った定量調査のやり方について説明します。
お金をかけない市場調査のやり方
定量調査を行なうためには準備が必要です。事前に下記の項目を社内で決めましょう。
- プロジェクトの担当者
- アンケートを行なうサイト
- 募集するエンドユーザーの属性
- 参加者を募集するテキスト
- 質問項目(アンケート項目)
- 予算
1. プロジェクトの担当者
市場調査プロジェクトは、一般的にはマーケティング担当者を中心に行なうことが多いと思います。
しかし可能ならばマーケティング担当者だけでなく、営業担当者もプロジェクトチームに入った方が良いと思います。
なぜならば、営業担当者は社内で最もエンドユーザーに近いポジションにいるため、アンケートで聞くべき項目を肌感覚で知っています。
また必ず社長直轄のプロジェクトにして下さい。
市場調査は会社や事業の今後の展開に関わる、とても重要なマーケティング手法です。そのため社長自身が関わることで、プロジェクトメンバーの意識も高まり、結果として精度の高い調査に繋げることができます。
2. アンケートを行なうサイト
回答者を集め、アンケートを実施できるサイトはいくつかありますが、私が個人的に使った経験からお勧めするサイトはランサーズです。
ランサーズはフリーランサーと企業を結びつけることを目的にしたマッチングサイトの大手企業です。
同業主でクラウドワークスという会社もありますが、特に大きな違いはありません。
フリーのプログラマーやデザイナーに単発案件を発注する目的ならば、他の中小のマッチングサイトでも良いと思いますが、市場調査の場合、発注する人数が多くなりますので、やはりシステム上、大手のマッチングサイトの方が安心感があります。
3. 募集するエンドユーザーの属性
アンケートを行なう際、最も重要なのが募集するエンドユーザーの属性です。
市場調査を専門に行なっている会社では、属性は年齢層、性別、婚姻、仕事、職種、趣向など、かなり細かいセグメントまで分けられています。このような属性でフィルターをかけ、人員を抽出することをスクリーニングと呼びます。
通常、スクリーニングを依頼するだけで費用が発生します。
つまり実際にアンケート結果を入手できる母数が分からない状態でも、数万円以上の費用がかかるということです。
あくまでも個人的な意見ですが、小さな会社が自社でアンケートを行なう場合、過度にスクリーニングにこだわる必要はありません。
どんな会社でも自社の顧客ペルソナは設定していると思います。ならばまずはそのペルソナ像に沿ったセグメント層を募集しましょう。
スクリーニングのセグメントは考え出すと、思いのほか時間がかかってしまいます。無駄な時間を費やす前に、まずは今分かる範囲で募集をかけることが大事です。
4. 参加者を募集する際の文言
マッチングサイトでアンケート募集を行なう際、実は一番難しいのが募集する時の文言です。
これについては決まったテンプレートはありません。最も良いやり方は、他社の募集ページの文言を、そのまま真似ることです。
ランサーズでは他社が行なっているアンケート募集ページを閲覧することができます。そして実際に応募した人数も確認できます。
応募者数が多い募集ページは傾向として簡単なアンケートであったり、内容の割りに単価が高めであることが多いのですが、そういった会社は履歴を見ると過去にかなりの数のアンケートを行なっています。
つまり既に人が集まるページの作り方がわかっている会社です。
なので初めて自社で市場調査を行なう場合、下手にオリジナリティを出そうと無駄に時間をかけるのでなく、こういった会社の応募ページの文言をそのまま真似た方が結果が出やすいだけでなく、時間の節約になります。
応募人数は多すぎても集計に時間がかかるだけです。自社で行なうアンケートの一番の利点はコストを抑え、小回りを利かせられる点です。
そのため当面は50名~100名程度で行なうことをお勧めします。
5. 質問項目(アンケート項目)
質問項目は会社によって様々だと思いますので、まずはプロジェクトチームの中で質問項目をブラッシュアップしてみて下さい。
質問項目には決まったルールや正しい答えというものはありません。商品やサービスについて聞きたいことを率直に質問しましょう。
ここで大事なことは、回答者にできる限り考えさせない答えを用意する事です。定量調査では直感の答えの方が重要です。
選択肢を提示する質問の場合なら漠然とした質問ではなく、ピンポイントで質問して下さい。商品の場合は必ず写真を提示してください。
例えば二つの商品写真と商品説明を掲載して、


このように二つの写真を出しながら、各パーツごとにどちらが良いかと聞いたほうが、直感で答えやすくなります。その理由についても、あらかじめこちらからいくつか選択肢を提示してあげた方がスムーズな回答に繋がります。
ここまで回答させた後に、その理由は何か?という定性的なコメントをもらうと回答者もストレス無く回答できます。
定性的なコメントについては文字数を指定した方が良いです。回答者によっては一言だけしかコメントを残さない方もいます。長すぎても嫌がられるので、50~100文字程度が良いと思います。
大事なことを最後に書きます。
一つのアンケートであれもこれもと複数の商品の調査を行なうのは止めましょう。
コストを抑えたい気持ちは分かりますが、アンケート回答者の立場になって考えると、手間暇のかかる面倒なアンケートには答えたくありません。
6. 予算
予算については、アンケートを行ないたい商品と質問数によって大きく変わります。
基本的な考えはこのようになります。
- 単価: 低い ⇔ 高い
- 質問項目: 少ない ⇔ 多い
- 質問内容: 単純 ⇔ 複雑
- 形式: 選択肢 ⇔ コメント
単価については適正価格と言うものはありません。
ランサーズでは他社が行なっているアンケート募集ページを閲覧することができます。そして実際に応募した人数も確認できますので、それらを参考に単価を設定して下さい。
仮に単価50円で100名募集しても5,000円です。サイト運営会社に手数料を支払っても、1万円もかからずにアンケートができます。
1万円~2万円程度ならば、失敗してもそれほど大きなリスクではないですよね。上手く行かなかった理由を検証し、翌週に再度募集することも十分できます。
市場調査には修正が必須
上記の項目が明確になったら、後はアンケートプロジェクトを公開して、参加者を募りましょう。
応募者が集まらない場合
もしも集まりが悪ければ他のプロジェクトの詳細を改めて確認し、単価や募集要項を修正します。
アンケートでは応募者の数は単価だけでなく、答える項目の数や内容によってもかなり変わります。
市場調査に慣れていない企業の場合、沢山のデータが欲しいあまり、重箱の隅を突くような質問を山ほど提示する場合があります。
確かにその気持ちは分かりますが、実際に自分がアンケートに応募する立場になった時に、そのようなプロジェクトに応募するかどうかを考えてみて下さい。
市場調査は経験が重要
自社で行なう市場調査では、最初から100点を目指してはいけません。
市場調査は一回やっておしまいではなく、くり返し定点観測を継続することで、精度の高い重要なデータを集めることができます
つまりくり返し調査項目や質問内容を修正していくことで、市場調査のノウハウやスキルは自社に蓄積されていくのです。
自社で行なう市場調査はコストを抑え、くり返し検証をしながら行なうことが重要です。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
市場調査会社に一度見積もりを依頼すると分かりますが、市場調査の費用は驚くほど高いです。
もちろん費用に見合うだけの細かい設定をしてくれるので、そこにメリットを感じるならばコスト的には妥当だと思います。
しかし中小企業やベンチャー企業、さらには士業やコンサルタントといった個人事務所のようなスモールカンパニーの場合は、細かい精度を気にするよりも、繰り返し定点観測を行なった方がはるかに得られるデータは多くなります。
是非とも皆様の会社でも自社調査にトライしてみて下さい!