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大手企業では日常的に行なわれている競合調査ですが、自分の会社の予算では調査会社に頼むのは予算的にハードルが高いと思われる方もいらっしゃると思います。しかし質問力を高めることで、自社でもある程度は調査できることがあります。
与信調査で有名な某大手調査会社が行なう調査は、あらかじめ社名を伝えた上でインタビューを行ないます。つまり表向きの情報を入手することはできます。しかし我々がこれらの会社から依頼される調査は、全て素性を隠した覆面調査です。正面から行っても一切取れない情報を入手する事がミッションです。
高橋さん
しかし、もしかしたら無理というのは思い込みかもしれませんよ。実は成功している企業の社長の中には、会社が小さいころに自ら敵情視察を果敢にしていた過去を持つ方が多いのです。
本音を聞きだす企業調査に最も必要なスキルは質問力です。ストレートに質問しても、相手の本音を聞きだすことはまず不可能です。正直には言いたくない情報を引き出すためには、質問の仕方を変えるしかありません。
この記事では質問力を高めるために、実際に私が使っている質問方法を三つ上げて説明します。是非とも最後までお読み下さい。
この記事の目次
両社の立場を明確にした質問
お互いの立場を明確にするだけで質問力は高まります。
知らない相手からの問い合わせ
午前10時に知らない会社から、電話でこのような問い合わせが入りました。
- そちらの売れ筋商品はなんでしょうか?
- その商品は月間何個売れていますか?
- 売上げを教えて下さい?
あなたは素直に答えますか?まず答えませんよね。関係性も構築できていない、ましてや誰かも分からない相手に自社の話をするようでは、コンプライアンス的にも相当マズイです。
しかしこのような場合でも、お互いの立場を明確にすることで、相手の本音を引き出すことができます。
見込み客からの問い合わせ
例えば、自分は商品に興味を持っている客であるという立場をとった場合、このようになります。
いま御社のサイトを見ていて、〇〇という商品を購入するか考えているのですが、実際にこの商品はどの程度売れていますか?
上司にも見せたいのですが、実績を知りたいのです。
あとロットが増えた時の値引きや、卸販売の際の掛率についても知りたいのですが。
A社担当
結局は商品がどれくらい売れているか、実際の単価はいくらなのか知りたいという事に変わりはありません。しかし質問の仕方を変えるだけで
商品を購入したい見込み客が、わざわざ問い合わせてきてくれた
という設定に変わります。つまり営業担当者としては、苦労せずに新規顧客の開拓ができるかもしれないという状況になる訳です。当然ながら丁寧な接客モードに切り替わります。
このように両社の設定を考えた上で質問をすると、人間は思わず答えてしまうケースが多々あります。
こちらの記事も参考になりますのでお読み下さい。

なぜ?という質問で誘導する質問
話を聞いている中で、相手の言っている意味がよく分からないことってありませんか?
日本人は聞き返さない
外国では話しの中で確認を取ることは一般的ですが、日本人は調和を重んじる特性が強く、特に仕事上ではあまり人の話を聞き返すことはしません。そのため商談やミーティング中に
B社担当
と聞かれると、必要以上に丁寧に説明をしてくれる傾向が強いです。
この特徴を利用し、情報を聞き出したい相手と話をしている最中に、自分の知りたい情報に近しい話になってきたらすかさず
それはなぜですか?
と質問を入れます。
すると相手は質問に対してより分かり易く説明をしてくれます。さらに
B社担当
といった質問を投げることで、上辺の説明から本質に誘導することができます。さらに自分の本当に知りたい情報に関して、
B社担当
など単刀直入に質問するのもとても有効です。
質問されると言うことは自分は教える立場であり、相手は自分の事をより知識のある人間だと認識していると考えます。つまり承認欲求を満足させることで、簡易的な優越感を演出すると言うことです。
この点を把握しながら質問を投げることで、ついつい本音をポロッと言ってしまう方は非常に多く、特に技術者はこの傾向が強いです。
競合他社に関する質問
話をしていく中でガードが固い担当者も沢山います。そのような場合でも、競合他社の話については心理的なガードが低くなる傾向があります。
担当者の心理的なガードを下げる質問力
仮に調査ターゲットの売れ筋商品が知りたいとします、いろいろな角度から質問を投げてものらりくらりと交わされているような時、類似商品を扱っている競合他社の話を振ってみます。
実は先日××社から聞いたのですが評判良くて、毎月〇千万程度は売れてるみたいですよ。
C社担当
自社の話はしなくても競合他社の話はしてくれる担当者は結構います。
この場合、あくまでもこちらのペースに載せることが目的なので、話のテーマは特に何でも構いません。まずは自分から話をしてくれる環境を作ることに注力します。その中で話を徐々に聞き出したい方向に持って行き、流れの中で
C社担当
などと笑いながらサラッと質問します。ガードを固めている時にはホンネは出ませんが、会話を交わすような関係性ができると口が軽くなる人は多いのです。
ヒアリング調査のやり方についてはこちらの記事も参考になります。

まとめ
いかがでしたでしょうか?
これらは私が200社以上の企業を調査分析してきた実体験から見つけた、実践的なスキルのごく一部です。
質問力は一朝一夕で身に付くものではありません。しかし一度身につけると、顧客の本音を引き出すと言う点で、コンサルティング営業のスキルとしても生かすことができます。
是非とも皆さんも一度試してみて下さい。